大井人工干潟における微細気泡発生が二枚貝生息環境に与える影響

 国立環境研 ○木幡邦男・樋渡武彦、日本ミクニヤ 市村 康 東海大 木村賢史、日本ミクニヤ 村田憲要・瀬尾亮平、国立環境研 篠塚由美・渡辺正孝、森機械製作所 森 光典、日鉄鉱業 田中宏史

1.はじめに

富栄養化の進んだ内湾に造成される人工干潟では、夏期に貧酸素の影響を受けやすい。発表者らは、人工干潟の生息場環境を評価する一つの手法として、二枚貝の成長、生残を用いる調査・実験を実施し、また、貧酸素の影響を軽減させるため人工干潟に微細気泡発生装置を設置して、その二枚貝生息環境への効果について調査してきた。本研究では、今までの調査結果をまとめ、微細気泡発生装置の、二枚貝の生残や成長に及ぼす効果を検討した。


2.調査・実験方法

 二枚貝の養成実験は、平成11年7月に、東京都大井埠頭中央海浜公園内に造成された人工干潟(大井人工干潟)で行った。大井人工干潟は、昭和54年に造成された人工海浜の北端部に位置し、泥分を多く含む山砂部と、粒径の比較的そろった洗砂部で構成されている。

平成13年5月〜10月、平成1310月〜平成1410月に下記の網籠を用いた養成実験を行った。この期間の実験ではアサリがほぼ全滅したため、平成157月〜10月には、(株)森機械製作所製(送気量30L/min)の微細気泡発生装置を人工干潟に設置し、また、平成166月〜10月には、同装置と、日鉄鉱業(株)製の装置(送気量80L/min)を設置して、微細気泡発生装置の効果を検討した。

二枚貝の生息場環境を評価するために、ステンレス製網籠(編み目5mm40cm×40cm、深さ20cm)を人工干潟の山砂部、洗砂部、対照として人工海浜に埋設し、籠内で二枚貝を養成した。各籠にはアサリを初期に100個体/籠の密度で入れ、アサリの殻長、殻高、殻幅及び殻付き湿重を毎月測定した。


3.結果と考察

 大井中央海浜公園の前面にある水路は、年間を通して酸素が少なく、干潟も貧酸素の影響を受けやすいことから、平成1314年には、アサリがほぼ全滅した(図1)。しかし、微細気泡による曝気を実施した平成1516年では、相当数のアサリが秋まで生残し、微細気泡発生による環境の改善効果が確かめられた(図1)。曝気した領域では、隣接の海域に比べ、溶存酸素が高かった(本年会、1-B-13-4参照)。人工干潟内で人工海浜に比べ生残が良くないのは、人工干潟が石積みで囲われ、海水交換が制限されているためと思われる。人工干潟内では、洗砂の方が、山砂よりも良い生息場環境を与えていた。

<図1>
調査期間中の大井人工干潟におけるアサリの生残数の変化。平成
15,16年には微細気泡による曝気を実施した。

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